米農家としての取り組み


 計画策定


前年の12月に翌年の米の作付計画策定を行います。
特に特熱栽培米は米ぬか、有機肥料を使用します。
土質成分に偏りが出るため、ここはとても気を使うところです。
したがって、ある程度の面積規模で経営をしなけば特別栽培には
取り組みは出来ないと考えています。

 土つくり

米ぬかを隔年で散布します。30トン以上の米ぬかを必要とします。
米ぬかは食味値に影響を与えるマグネシュウムを多く含み
美味しい米作りには必要不可欠な肥料のひとつですが、
現在、自社生産の米ぬかでまかなっています。
投入時期は5月中旬です。シロカキの1カ月前です。
農業試験場のデーターを参考に、ここ大切。投入時期が遅いと、食味値に影響が出ます。
有機肥料についてふれておきます。

飼料メーカーは東北に多いのですが、原発の事故以来弊園では、
九州のメーカーで魚介類主体の肥料を選択しています。
通常有機肥料は家畜の糞を中心にした肥料が多いものです。
家畜が食べている草は多かれ少なかれ放射能を含んでいます。
それを食べることで濃縮し、糞として排出されます。
それらを主原料に、肥料を作っているケースが多いです。
私達は、これをわざわざ散布する必要はないと考えます。
お客様へのリスクは極力避けて通りたい。
他の資材もそうですが、毎年ほ場に散布しなければならないものは
特に気をつけます。

 種子の選別

自家採取のもの、購入するもの、其々使用します。
しかし、その年購入したものでも良くないものがあればそれは使用しません。
もったいないと思われるかもしれませんが、上でももふれたように
人間が出来る事は本当に限られます。ここも非常に大切です。
『キチンとしたお米』になってもらうためには種子の破棄も仕方ないと考えています。


 苗つくり

昔の方は良く言ったもので、 『苗半作』(ナエハンサク)
キチンとした苗が出来れば半分は出来たようなものという意味です。
健全な若い苗『20日苗』岡山県南では種もみを土におとして20日たった苗のことです。
ここの日にちの経過も、その後に影響が出ます。先人に感謝です。

 田植作業

健全な苗を 『美しく植える。』 食味には影響は全くありません。
植えた姿すら商品の一部と考えます。
まっすぐな所はまっすぐ、曲がったところは曲がったように。

 草刈

田んぼの周囲の草刈が主ですが、田んぼの中、外、ここも美しくなければならないと
考えています。買ってくださる方に、申し訳が立ちません。
しかし、田んぼの管理で最も長時間なわたり、行わなければならない
重労働な事は御察しのとおりです。言葉では簡単です。続けることは本当につらい。

 稲刈作業

最近のコンバインは高性能です。食味計が付いたものが発売されています。
購入予定、しかし1000万円を超えてきます。しかしながらファーム安井にとっては
費用はかさみますが、我社向けに開発されたのではないかと思うぐらいタイムリーです。
刈取時に、食味数値が高いもの、低いもの刈りわけておき、後の処理を別々に管理できます。

 乾燥調製籾摺り

先ほどの刈りわけしたものを、区別しておきます。
数値が高いものは、急激に乾燥させない、通常ほど乾燥させない、
この後の保管が非常に難しくなります。だから、皆さんこんな事はしていないです。
ここもポイントです。
数値が低いものは、通常どうり乾燥し、加工用、飼料用として農協に出荷していきます。

 お米の検査

4種類行います。検査費用だけでも30~40万円は掛ります。弊園は当然の経費と考えています。

  ▶ 等級検査
  昔からある外形についてのものです。食味には影響は有りませんが、コンプライアンス必要です。
  自社で生産されたものは全て受けます。反省・勉強の材料にします。

  ▶ 食味検査
   このために一年を費やしたといっても過言ではありません。
   ここで販売するものをよりわけます。全量は販売できません。
   しかし、どこまでを販売するかはかなり迷うところです。
   早くから在庫を切らせてしまう年も出来てしまいます。今後の検討余地ありです。

 ▶ 残留農薬検査
   もちろん、検出されない過程をとっているとはいえ心配です。
   初めて8年目ですが、検出された事は御座いません。この検査結果が出てから出荷になります。
   1週間~10日は掛りますので、同業の皆さんより出荷は遅くなります。
   これは検査を始めてからの弊園のルールとしています。

  ▶ 放射能検査
   赤磐市のみのサンプル検査です。3.11の後も数値が出た事はありません。
   一昨年までは生産している三市町で行っていました。
   初めて放射能検査に出すときは、周りで測定した記録が無かったため、前もって同業他社
   関係機関には、検査に出す前にその旨をお知らせしました。


 保管

ここは20年前から13~15℃での冷蔵保管です。
当時はまだお米の冷蔵庫など皆さん持ってなかったです。導入当時父親が社長でした。
作ればもうかる時代に、よく承諾してくれたものだと、今になって感心します。
うちの父は偉大です。 本当に感謝です。

 精米

冷蔵保管されたものは3日間、以上かけて常温に戻します。冷えたまま精米すると割れてしまいます。
小売りを始めたころは、ほぼほぼ玄米販売のみでした。精米となれば近所のコイン精米機でした。
ぽつぽつ精米を希望される方が増えたころから、俗に言うクレームが増えてきたのでした。
割れている、石がある、ゴミが入ってる。黒いかびの玉がある。モミガラが入ってる。虫がいる。
スゴイものではネズミの糞が入っているものまでありました。
この方、今でも感謝です。現在は購入されてません。お顔ははっきり覚えていますが!
このように様々なご指摘をいただいて、今の精米ラインを考えました。
実は、無洗米の基準はクリアしています。お客様にはお伝えしていませんが。
洗米が悪くても、米が悪いといわれてしまいます。
お陰で今では精米機械マニアです。
たくさん伝えてくださった方々に本当に迷惑をおかけし、今があるのです。感謝です。
気がつけば、お米屋さんも見学に来られる設備となりました。

 出荷

精米日は関心のある方やこだわりのある方に選んで頂きやすくするためにあえて、
正面に記載しています。
コンプライアンスのために裏にも表示します。
精米して三週間たった米は店頭から撤去しておきます。
販売は ノーマル園芸さん、稚媛の里のみです。
実はあの値段、二店舗の農産物直売所での販売では県内トップです。

 想う事

沢山書いてしまいましたが、其々は全く難しい複雑な過程は有りません。
しかし、種からお客様に食べていただくまでの工程に何処かが間違っていると、
美味しいとは言ってはいただけないのです。
ありきたりですが、キチンと仕事を積み上げる事のみなのです。

簡単も積み上げれば複雑に見えてくるものですが、一つ一つ整理整頓し、其々を深く掘り下げる、
その上で自分なりの結論を見出すだけです。

幸いなことに、稚媛の里でお客様に直接ご指導頂ける機会がある事は、
ファーム安井にとっては大きな強みである事は間違えないです。
自己満足にならない様、お客様の声に敏感でいたい。

兄弟米についてですが、平成19年に皇居まで行き天皇皇后両陛下に直接献上させていただき、
お言葉を頂きました。
俗に言う献上米です。お二人の厳かな中の空気の重さに圧倒されてしまい、記憶が飛んでいます。
これは各県から一名選ばれ、秋の大祭新嘗祭の使われるお米を納めさせていただくものです。
その時私39歳、他県の皆さんは間違えなく各地域のご重鎮の方であろう年の方ばかりでした。
スーパー場違いでした。もっと意味のある年齢の時に献上したかったです。

それと、携わってくれている方々、地域の皆さん、購入してくださる方々に、感謝です!
もっと答えていけるよう精進していきます。


                               ㈱ファーム安井  安井 正

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心と想いを添えて

最後に、
 『稚媛の里』などの直売所で、直接お客様にお買い求め頂くファーム安井のお米は、
一袋、一袋、手描きの文字で名前を記しています。

それは、私どもの手元を離れてお客様の元に受け渡す、大切な晴れ着であるとともに
ファーム安井のお米であることの、自信と責任の表れでもあります。

そんな心と思いを添えて、皆様の ” やっぱりおいしい ” にたどり着けます事を、
心より願っております。